事件概要

2010年2月、徳島県小松島市に住む当時25歳のF.M被告(無職)が、女性4人を襲い、けがをさせたり性的暴行を加えようとしたとして起訴された。

報道によれば、F.M被告は2009年から2010年にかけて、徳島県内で深夜に帰宅途中の女性を狙い、暴行を加えて性的暴行に及んだとされる。同じ犯人による連続的な犯行で、被害者の中にはけがを負った者もいたという(けがの程度は報道未確認)。

地域住民の不安が高まるなか、徳島県警は集中的な捜査体制を敷き、F.M被告を逮捕・起訴した。本件は、2009年5月にスタートしたばかりの裁判員制度が、性犯罪を扱った初期の事例の一つとして注目を集めた。

判決

・判決日:2010年2月18日

・裁判所:徳島地方裁判所(裁判員裁判) / 裁判長:畑山靖

・判決:懲役10年(求刑:懲役12年)

判決理由について報道では、「同じ犯人が何度も執拗に犯行を重ねたこと、被害者の心と体に深い傷を残したこと」を厳しく受け止める一方、「被告に前科がない」点などを情状として考慮したと伝えられた。裁判員制度が始まって日が浅い時期に、性犯罪をどう裁くべきかという問題を社会に投げかけた事件である。

裁判員の声

判決後の記者会見では、裁判員の一部から「判断の重さをずっしりと感じた」「被害者の気持ちを思うと、判決を出すまで迷いに迷った」との発言があったと報道された。性犯罪に対してどのような刑が妥当かを社会全体で考えるきっかけになった事件といえる。

被害者の声

被害にあったのは20代から30代の女性4人とされる。事件後、心と体への深刻な影響が報じられた。プライバシー保護の観点から、個別の情報は控える。

量刑の相場

強姦致傷罪(当時の刑法第181条)に定められた刑の重さは「無期、または5年以上の有期懲役」である。この罪は2017年の法改正で「強制性交等致傷罪」、2023年の改正で「不同意性交等致傷罪」と名前を変えながら、要件も整理されてきた。

量刑を決める際、裁判所が見るのは、被害にあった人の数、犯行のやり方がどの程度悪質か(凶器を使ったか、計画的だったかなど)、被害者のけがの程度、被告に前科があるか、反省や示談ができているか、被害者の心への影響、などとされる。

複数の被害者がいた連続強姦致傷の事件では、過去の判例を見ると、懲役8年から15年の幅で判決が分かれる傾向があるという(事件ごとの差が大きく)。

同種事件の判決

似たような事件として、複数の女性に対する強姦致傷事件で、被害者の数や凶器の使用、計画性などを理由に懲役13年前後が言い渡された判例もある。被害者の人数や悪質さ、けがの程度によって、量刑は大きく変わる傾向がある。

諸外国の事例

海外ではこの種の犯罪をどう扱っているのか。主な国の状況は以下のとおりである。

・アメリカ:レイプ罪は州ごとに法律が異なるが、連続レイプ事件では実刑20年から終身刑が一般的とされる。

・イギリス:Sexual Offences Act 2003に基づくレイプ罪の最高刑は終身刑。量刑ガイドラインでは、複数の被害者を伴う重大事件は15年から19年の実刑が標準とされる。

・ドイツ:刑法第177条の「性的強要・強姦」は、加重事由があれば終身刑、または5年以上の自由刑

・フランス:刑法第222-23条以下、加重事由のある強姦は禁錮20年、または無期。

・スウェーデン:2018年の性犯罪法改正で、「同意なき性行為」を処罰の対象に広げた。

日本の懲役10年は、欧州諸国の同種事件の量刑と比べて、軽いのか、重いのか。比較してどう考えるかは、議論が分かれるところである。

併科措置に関する論点

性犯罪については、刑務所に入れるだけでなく、「再犯防止プログラムの強制受講」「住む場所の制限」「GPSの装着」など、刑に追加する措置を導入すべきかどうかも議論されている。日本では現在、刑務所内で性犯罪者向けの処遇プログラム(R3)が行われているが、出所後については法的な枠組みが少ないのが現状とされる。

参考リンク

・徳島新聞 2010年2月19日付 該当事件判決報道

・読売新聞 該当事件判決報道(2010年2月)

・朝日新聞 該当事件報道(2010年2月)

法改正動向

2017年の刑法改正で、強姦罪は「強制性交等罪」に名前が変わり、刑の下限が懲役3年から5年に引き上げられた。2023年の改正では「不同意性交等罪」に整理。性犯罪を厳しく取り締まる方向で、要件も時代に合わせて更新が進む。