事件概要

2022年、静岡県裾野市の私立保育園『さくら保育園』で、30代の元保育士の女性3人が、園児に暴行を加えた疑いで逮捕・送検された。報道によれば、保育士らは園児を逆さ吊りにする、頭をはたく、カッターナイフをちらつかせる、肩を強くつかんで持ち上げる、足を持って引きずるなど、悪質な暴行・虐待を加えていた。

事件は、他の保育士の内部告発と、園が独自に行った調査で発覚した。当初、園側は保護者への説明を行わず、隠蔽しようとした疑いも報じられた。発覚後、3人の元保育士は逮捕され、暴行罪等で起訴された。

保育の現場における虐待事件としては、近年でも極めて悪質な部類であり、保護者の信頼を裏切る行為として全国的に大きな反響を呼んだ。

判決

・裁判所:沼津簡易裁判所

・判決:罰金20万円(略式命令)

・対象者:38歳の元保育士

・罪名:暴行罪

報道によれば、30代の元保育士3人のうち2人は不起訴処分となった。一方、38歳の元保育士については、園児の両足をつかんで宙づりにしたり、手足口病の症状が疑われる園児の尻を別の園児に触らせたりした暴行について、地検沼津支部が略式起訴した。

その後、沼津簡易裁判所が罰金20万円の略式命令を出したと報じられている。重大な身体的傷害が確認されていない暴行罪の枠内で処理された一方、保育士という立場と被害児童の年齢を踏まえ、罰金刑にとどまったことへの疑問も残る事件である。

被害者の声

被害児童は1歳児クラスの複数の園児たち。重大な肉体的傷害は確認されなかったものの、精神的な影響、保護者の心労は計り知れない。事件後、保護者会が結成され、園・市・県への徹底調査と再発防止策を求めた。

事件を機に、内部告発した保育士の存在も注目された。同僚への告発という心理的負担を背負いながら、子どもたちを守るために声を上げたとされる。

量刑の相場

暴行罪(刑法第208条)の法定刑は『2年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留または科料』。傷害罪(刑法第204条)の法定刑は『15年以下の懲役、または50万円以下の罰金』。

施設内虐待事件の量刑判断要素は、被害児童の数、暴行の悪質さ、被告の立場(保育士・教員等)、隠蔽の有無、被害児童の傷害の有無、反省の程度などとされる。

肉体的傷害が大きくない暴行罪の場合、初犯では罰金刑または執行猶予判決となることが多い傾向。本件のように立場の重さや悪質性が指摘されても、刑事処罰の枠組みでは罰金にとどまることがあり、これが量刑論争の的となった。

同種事件の判決

2020年代以降、保育園・幼稚園・学校での教職員による暴行事件は複数報道されており、罰金刑から執行猶予付き判決までの幅で量刑が分布する傾向。

諸外国の事例

・アメリカ:児童虐待罪(child abuse)は州ごとに異なる。施設内虐待では資格剥奪と刑事罰の両方が厳しく科される傾向。

・イギリス:児童虐待罪(child cruelty、Children and Young Persons Act 1933 第1条)で最高10年の禁錮。

・ドイツ:刑法第225条『被保護者虐待罪』で最高10年の自由刑。

・フランス:刑法第222-12条以下、未成年に対する暴行・虐待は加重事由。

(引用元:各国法務省・児童保護機関ウェブサイト等を参照)

日本の暴行罪の上限刑は欧米と比較して低めであり、施設内虐待の量刑が議論を呼ぶ背景の一つになっている。

併科措置に関する論点

施設内虐待事件では、(1)保育士・教員資格の剥奪、(2)児童関連業務への就業禁止(『日本版DBS』制度の活用)、(3)施設の運営許可取り消し、(4)監督官庁による立入検査の強化、(5)内部告発者保護の充実、(6)保護者への情報開示義務などが論点となる。

参考リンク

・NHK NEWS WEB『裾野市保育園虐待事件 元保育士に罰金10万円判決』(2023年、要URL確認)

・朝日新聞デジタル 裾野市保育園虐待事件 一連の報道(2022〜2023年)

・毎日新聞 裾野市保育園虐待事件関連報道

・静岡新聞 さくら保育園虐待事件報道

・裾野市・静岡県 公表資料(調査報告)

法改正動向

本件などを契機に、2024年に『学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律』(こども性暴力防止法、いわゆる日本版DBS)が成立(2026年6月一部施行予定)。学校・保育所・塾などで職員の性犯罪歴を雇用主が確認できる仕組みが整備される。あわせて、児童施設での虐待防止策・通報体制の見直しが進められている。