事件概要
2022年、滋賀県大津市内のマンション一室で、当時の滋賀医科大学医学部の男子学生3人が、知人女性に集団で性的暴行を加えたとして、強制性交等罪で起訴された事件である。被告らは飲酒の場のあと、元大学生の自宅に女性を連れて行き、動画を撮影しながら性的行為に及んだとされる。
起訴された3人のうち、首謀者とされた元大学生は2024年6月、最高裁で懲役5年6か月の判決が確定。残る2人のうち、27歳と29歳の被告については、一審大津地裁が有罪判決を出したが、二審大阪高裁が逆転無罪を言い渡し、検察が最高裁に上告するという、判断が大きく揺れる展開となった。
性交の合意があったかどうか、女性の証言の信用性をどう評価するかが大きな争点となり、性犯罪事件の証拠評価のあり方を改めて問う事件となっている。
判決
■ 一審:大津地方裁判所
・判決:27歳被告 懲役5年/29歳被告 懲役2年6か月の有罪
・判決理由(要旨):女性が『何度も言葉で拒絶したのに聞き入れられず、絶望感から抵抗をあきらめた様子を具体的に述べている』として、その証言は『全体的に信用できる』と判断したと報道された。
■ 二審:大阪高等裁判所
・判決:逆転無罪
・判決日:2025年11月18日(報道による)
・判決理由(要旨):性行為が始まった時の状況説明を女性が伏せていたことなどを踏まえ、証言の信用性は『相当慎重に検討すべきだ』と指摘。動画には女性が自分で部屋のドアを閉めた場面があることや、行為の後に被告らとゲームをしていたことなどから、『同意があった疑いが拭えない』と結論づけたとされる。
■ 最高裁
・大阪高検は2025年11月26日、二審判決を不服として最高裁に上告した。
なお、別の元大学生(首謀者)については、2024年6月に最高裁で懲役5年6か月の判決が確定している。
検察側の主張
『女性は飲酒の場のあと判断能力が低下した状態にあり、執拗な要求に抵抗できなかった。複数被告による集団性的暴行で、動画撮影という悪質な要素もある。女性の証言は具体的かつ一貫しており、信用できる』として、有罪・実刑判決を主張したとされる。
弁護側の主張
『女性は事件後も被告らと普通にゲームをし、その後も連絡を取り合っていた。動画には女性が自分から部屋のドアを閉める場面が映っており、合意のうえでの行為であった疑いが残る』として、無罪を主張したとされる。
被害者の声
被害者は被告らの知人女性。事件発覚後、被害者は警察に告訴し、裁判では自身の被害体験を証言したとされる。性犯罪被害者の証言の信用性をめぐる議論が、本件の最大の焦点となっている。
量刑の相場
強制性交等罪(2017年改正後、2023年の改正で『不同意性交等罪』に整理)の法定刑は『5年以上の有期懲役』。集団による犯行の場合、刑が加重される。
集団による性的暴行事件の量刑相場は、被害者数、犯行態様の悪質さ、撮影・流出の有無、被害者への精神的影響などにより、懲役5年から15年の幅で分布する傾向がある。
本件のように、一審と二審で判断が180度分かれる事件は珍しく、性犯罪における証拠評価・証言信用性の判断基準が問われる象徴的事案となっている。
同種事件の判決
集団による強制性交事件として、慶應大学の集団強姦事件(2016年)、千葉大医学部生による強制わいせつ事件(2016年)など、医学部・有名大学生による事件が過去にも社会的注目を集めた。
諸外国の事例
・アメリカ:集団レイプ(gang rape)は連邦・州法で重く処罰され、終身刑が選択肢となる州もある。
・イギリス:Sexual Offences Act 2003、複数被害者・集団犯行の場合の量刑ガイドラインで実刑15〜19年が標準。
・ドイツ:刑法第177条加重事由付きで終身刑または5年以上の自由刑。集団犯行は加重事由となる。
・フランス:刑法第222-24条以下、集団による強姦は禁錮20年。
・スウェーデン:2018年改正『同意なき性行為』を処罰対象に拡大。
(引用元:各国法務省ウェブサイト、Sentencing Council UK等を参照)
日本の性犯罪事件における証言評価のあり方は、欧米諸国と比較して『被害者証言への信用性付与』の傾向が議論される。
併科措置に関する論点
性犯罪事件では、刑事罰に加え、(1)再犯防止プログラムの強制受講、(2)被害者支援の充実、(3)動画・画像が撮影された場合の削除・流出防止、(4)性犯罪者登録制度の必要性、(5)二次被害(SNSでの被害者攻撃等)の防止などが議論されている。
参考リンク
・朝日新聞デジタル『滋賀医大生3人による性的暴行事件、大阪高検が最高裁に上告』(2025年11月26日)
・毎日新聞 滋賀医大生集団強制性交事件 一連の報道(2022〜2025年)
・京都新聞 滋賀医大生事件関連報道
・NHK NEWS WEB 滋賀医大生事件報道
・大津地方裁判所 判決言渡し情報(一審)
・大阪高等裁判所 判決言渡し情報(二審)
法改正動向
2023年6月の刑法改正で『強制性交等罪』は『不同意性交等罪』に再構成された。同意の有無をめぐる判断基準が法律上整理されたが、本件のように『同意があったか』を証拠から判断することの難しさは引き続き残っている。
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